俺ガイルのSSです。
前スレ:八幡「俺ガイルRPG?」
八幡「俺ガイルRPG?」-
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1430984337/l50)
前スレ957レス目より続き
× × ×
八幡「ようやく……帰ってこれたな」
結衣「長かったねー……」
いろは「疲れましたよ、もう……」
パーティメンバーの中から、愚痴が相次ぐ。
ここは4の国の女王……ていうか最初に来た留美の屋敷。
長い道のりであったが、ようやくダンジョンをクリアし、そして帰ってくることが出来たのであった。
いや、本当に長かった……今までの1~3の国のダンジョンも決して楽ではなかったが、今回はそれまでと比べて特別長く感じた。ボス戦が実質3連戦だったからかもしれない。
ゲームの中なので肉体的疲労はないが、精神的疲労が凄まじい。
それは俺だけではないようで、他のメンバーもそれぞれ疲れ切った表情を浮かべている。
例外は雪ノ下くらいか。あいつだけ一人涼しい顔を保っている。現実世界だと真っ先に倒れそうな奴だというのに。スタミナの概念がないこの世界だと、マジで弱点ねぇんだよな。
さて、これからどうしようかと思っていると、パンパンと手を叩く音が鳴った。
その音を鳴らしたのは、平塚先生。
平塚「さて、改めてご苦労だったな。もう夜も遅いし一日中戦い続きだったから疲れているだろう。今日はここで解散としようか。状況の整理は明日でもいいだろう」
留美「……部屋はこの屋敷の中にたくさん余ってるから、好きなところを使って」
八幡「わかった、ありがとうな」
平塚先生と留美の言葉が終わると、皆どこかふらふらとしながら部屋を捜しに行く。一日中走って戦ってと大変だったのだから気持ちはよく分かる。
俺も適当に見つけた扉に向かうと、そこを自分の部屋とすることにした。どうせどの部屋も内装は大して変わらんだろ。
戸塚「八幡、今日はお疲れ様。おやすみ!」
八幡「おう、おやすみ」
天使……もとい戸塚に挨拶を返すと、俺も部屋の扉を開けて、そのまま布団にダイブする。
今夜はよく眠れそうだ。そもそもゲームだから肉体的には疲れてないだとか、元々ベッドの上で目を閉じて寝ようと思えば疲れてなかろうが瞬時に寝られるだとかそういう無粋なことを言ってはいけない。
世界はゲームでも、俺の気持ちはリアルなのだ。
八幡「……アホか」
昨日、雪ノ下に薬を使った後、この世界はゲームだからノーカンだと言い訳した奴が何を言ってるのやら。
帰り道の時は魔物との戦闘に集中していたので忘れることが出来ていたのだが、今更になって脳裏に浮かんできてしまう。
雪ノ下と由比ヶ浜との──アレの経験のことを。
八幡「死にたい……」
ベッドの枕に頭をうずめて足をバタバタさせても、頭の中から忘却することは叶わない。
ていうか、昨日の雪ノ下は知らなかったからまだノーカン扱いでも俺の中では良かったのかもしれないが、今日は雪ノ下にもバレてしまったし、由比ヶ浜もほぼ察してるみたいだしな……。
八幡「やっぱ……話さなきゃいけないんだろうなぁ……」
仕方がなかったこととはいえ、やっぱ意識がない状態の女相手に……まぁ、やらかしちゃった謝罪はしなければならないだろう。
そうと決まれば早めに行動した方が良いかもしれない。このままだと明日以降も気まずくなってしまうかもしれないし、それにこういうのは後回しにすればするほど言い出しにくくなってしまうものだ。かつての由比ヶ浜や雪ノ下が、そうだったように。
彼女らも疲れているはずで、それを今から呼び出すのは少々気が引けたが、俺はベッドから起き上がると部屋を出た。
さて雪ノ下と由比ヶ浜を呼び出し……。
八幡「……あいつらの部屋ってどこだよ」
呼び出そうとしたところで、根本的な問題に気が付いてしまった。
そういや、あいつらがどこの部屋に入っていったか見てねぇ……。戸塚以外どこの部屋に誰がいるのかわからねぇ……。
どうしようか。
廊下から叫んで呼び出すという方法もあるにはあるが、超恥ずかしいし、他の奴の迷惑になるだろう。
仕方があるまい、部屋を一つずつノックして確認するか。それ以外の選択肢も思いつかないし。
雪ノ下たち以外の奴の部屋を引き当てたら、適当に誤魔化せばいいか。
左の部屋に戸塚が入っていったのは見たんだが……右の部屋に誰が入っていったか見てなかったな。
まずはここから当たろうか。
右の部屋の扉に向かって、控えめにノックする。
小町『はーい』
部屋の中から聞こえてきた声は小町のものであった。残念ながら一発ツモならずだ。あれかな、小町が相手だったから一発ツモ出来なかったのかな。この子、相手にしたらそこはもうあなたのテリトリーじゃないとか言って封じ込めてきそうだし。
八幡「あー……俺だけど」
小町『およ、お兄ちゃん? 今開けるよ』
ぱたぱたという足音がなった後、ガチャリと扉が開く。中から小町がぴょこっと飛び出してきた。
小町「どうしたのお兄ちゃん」
八幡「小町に用があるって訳じゃないんだけど……あれだ、雪ノ下と由比ヶ浜の部屋ってどこか知らねぇ?」
これが平塚先生か一色だったら間違えましたーと言って引き返すところであったが……まぁ小町ならいいだろうと判断し、そう問うてみた。
すると、小町は不思議そうに小首をかしげて俺の目を見つめてくる。
小町「何、夜這い?」
八幡「ちげぇよ、俺にそんな度胸があるように見えるか」
小町「見えないね」
自分から振っておいてなんだが、これは小町に信用してもらえていると思うべきか妹に骨無しチキンだと即答されたと悲しむべきか判断に困るところだ。
八幡「あれだ……あの二人に話があってな」
小町「ふーん……?」
八幡「だから、もしあいつらの部屋知ってたら場所教えてもらいたいんだけど」
何かを探るような小町の目線から逃れるように身を捩らせながら、そう聞いた。
さすがに薬を使った件について、と言うのは抵抗があったので言わないでおいたのだが、小町の「へぇー、ふーん、ほぉー?」などという鬱陶しい反応からすると多分何の話をしようとしているのかは察せられているのだろう。こいつに部屋聞いたのミスだったかな……。
小町「さっきの言葉は訂正するよ、お兄ちゃん。やっぱ度胸あると思うよ。昨日は言い訳して納得してたのに」
八幡「うるせ。言い訳くれたのはお前だろうが。それで、二人の部屋知ってんの? 知らないの?」
これ以上妹にからかわれるのも癪だったので、やや厳しい口調になりながら強めにそう問いただすと、小町はやや不機嫌になりながらも向こう側にある部屋を指差した。
小町「あっちの部屋が結衣さんで、そっちの部屋が雪乃さん」
八幡「わり、さんきゅな」
少々強く言い過ぎたかと反省しながらそう伝えると、小町に背を向けてその場を後にしようとする。
すると、背に小町の声が掛けられた。
小町「お兄ちゃん」
八幡「……なんだ?」
小町「頑張ってね」
たったそれだけを言うと、小町は扉を閉めて部屋に引きこもってしまった。
一体何を頑張れというのか。その「何を」の部分、大事よ? まぁ、あえて言わなかったんだろうが。
八幡「……さんきゅな」
もう一度、そう呟くと、とりあえず近くにある由比ヶ浜の部屋の方へと向かった。
× × ×
八幡「由比ヶ浜、まだ起きてるか」
コンコンと扉をノックする。これでもう寝てたのなら拍子抜けなのだが。
結衣『はーい……ヒッキー!? あ、今出るね!』
が、すぐに部屋の中から慌てたような由比ヶ浜の声が聞こえてきた。
八幡「そんな慌てなくてもいいんだけど……」
俺のその声は聞こえなかったのか、だだだっと速攻で扉まで駆け寄る足音がした後、ガチャリと扉が開かれた。
結衣「ヒ、ヒッキー……どうしたの?」
扉から出てきた由比ヶ浜の格好はいつもの魔術師の白ローブ姿だ。ゲームだから寝る時もいつもの装備と同じなのである。おかげで俺もいつも総武高校の制服姿。
八幡「あー、その、話があるんだけど……」
結衣「あ、話……話ね、うん……」
由比ヶ浜も何の話なのかすぐに察しがついてしまったのか、やや気まずそうに目を逸らした。
同様に俺も由比ヶ浜と目が合わせられずに目を逸らす。いや、だって今由比ヶ浜の顔見ると自然と唇辺りに視線が行っちゃうし……。
そんな変な空気をぶち壊すようにごほんごほんと大げさに咳払いをしながら、話を切り出すことにした。
八幡「まぁ、そうなんだが、雪ノ下も関係あることだから、あいつも呼んでいいか」
結衣「ん、わかった……」
言うと、由比ヶ浜は部屋の扉を閉めて出てきた。さて、雪ノ下は由比ヶ浜の部屋の隣だったな。
そちらに向かおうとすると、くいっと袖を引かれた。振り向いてみれば、由比ヶ浜が俺のブレザーの端をちまっと掴んでいる。
結衣「あ、あのさ、ヒッキー……ゆきのんはさ、ヒッキーと……その、したことってもう知ってるの?」
言葉をつっかえながら、そう言いづらそうに言われると、俺もなんだか恥ずかしくて逃げ出したくなりそうです。
八幡「ああ、一応な……」
結衣「そっか……それで、ヒッキー……あたしがさ、死んじゃった時にあれを使ったのって……ヒッキーで、いいんだよね?」
八幡「……ああ、そうだ」
実質的にお前が寝てる間に唇は頂いたぜという自白である。ほんともうこの世界が本当にゲームなら今すぐリセットしたい。
結衣「ヒッキーが……そうなんだ……」
すぐに由比ヶ浜から視線を逸らしたので、今どんな表情をしているのかは知らない。多分怒ってるんだろうなーと考えつつ、そのまま雪ノ下の部屋の扉の前に向かった。隣の部屋なので、わずか数歩の距離だ。
八幡「雪ノ下、起きてるか」
先ほどと同じようにコンコンと扉をノックする。すると、すぐに中から返事がきた。
雪乃『比企谷くん?』
八幡「そうだ。……話があるから、ちょっと出てきてもらっていいか」
雪乃『……少し待って』
八幡「わかった」
言われた通り、しばらくの間、扉の前でぼーっと待つ。由比ヶ浜の方には一切視線を向けず、また話しかけられることもなかった。時々、由比ヶ浜がぽわーとか、えへへとか、声を漏らしていたような気がするが全部無視した。
待てと言われてから数分もしないうちに扉が開き、そして中から鎧姿の雪ノ下が出てきた。
雪乃「……何の話かしら……由比ヶ浜さんも?」
八幡「あー……まぁなんだ、ここで話すのもなんだから広場にでも行こうぜ」
言いながら広場の方に向かう。雪ノ下も由比ヶ浜も、黙ってその後をついてきた。
そのまま屋敷の広場の方まで向かうと、近くに丸机を見つけたので、そこの椅子に座ることにする。雪ノ下、由比ヶ浜も続いて椅子を引いて腰かけた。
その二人も席についたのを見てから、俺は話を切り出す。
八幡「あー……そのですね」
雪乃「…………」
結衣「…………」
思わず敬語になってしまった。こちらを見つける雪ノ下と由比ヶ浜の視線がすごく痛い。
その圧力に思わず身を引いてしまいそうになってしまう。しかし、ここで圧力に屈するわけにはいかない!
八幡「その……すみませんでした」
二人「「何が?」」
ふえぇ……屈しちゃいそうだよぅ……。
改まってあのことについて言及するのは恥ずかしい上に恐ろしいのだが、言わなければ話は進みそうになさそうだ。
俺は頭をがしがしと掻き、若干やけっぱちになりながら、二人の顔を見た。
八幡「まぁ、なんだ、お前らの意識がない時に……その、口付けみたいな真似して、悪かった」
雪乃「…………」
結衣「…………」
二人の反応はない。そりゃそうだろう。
特に雪ノ下に関しては、今日発覚するまで黙っていたのだ。怒りを覚えてもおかしくはない。
仕方が無い、ここは一発土下座をかますとしよう。それで許してくれるとは思わないが、それ以上に出来ることもない。
さーて俺の鮮やかな土下座を見て逆に謝りたくなっても知らねぇぞ、と椅子から腰を上げようとした時、雪ノ下の冷たい声が俺を制した。
雪乃「どうして謝るの?」
八幡「は?」
反射的に聞き返してしまう。いや、そりゃねぇ。俺みたいなのが美少女の唇を奪うことになってしまったのだから、そりゃ謝りもするだろう。
とりあえず土下座する必要がありそうな雰囲気ではなくなったので、浮かせた腰を再び椅子に戻した。
八幡「いや、どうしてって」
雪乃「私は助けてもらった側よ、別に謝る必要はないと思うわ」
俺の方を真っ直ぐに見つめながら、そう断言されてしまった。そうは言ってもだがしかし。
由比ヶ浜の方に視線をスライドさせると、ばんと机に身を乗り出してきていた。同時に胸元辺りが大きく揺れたような気がしたが理性の力でなんとか視線を胸元から由比ヶ浜の顔に動かす。
結衣「そ、そうだよヒッキー、べ、別に、謝る必要なんてないし! むしろその、……うう」
八幡「いやでもだな、普通嫌だろ、寝てる間にそんなんやられるの」
結衣「え、べ、別に嫌じゃ、…………その、……起きてる……時に……でも……」
八幡「?」
胸の前で人差し指どうしをつき合わせている由比ヶ浜の言葉はどんどんと小さくなっていき、ほとんど聞き取れなかった。やっぱり怒ってるんじゃないのか。
そんな由比ヶ浜はさておいて、雪ノ下の方に視線を戻すと、先ほどまでと同じく真っ直ぐ射抜くような視線で俺の目を見つめてきた。
雪乃「なんともあなたらしいというか……むしろ、助けてもらったのにお礼がまだだったわね、ありがとう、比企谷くん」
結衣「あ、わわわ、あ、あたしも! ありがと、ヒッキー!」
八幡「え? あ、おう……」
謝るつもりだったのに、なぜかいつの間にかお礼を言われていた。あれ、なんでこんな流れになったんだっけ。
結衣「ていうか……ヒッキーの方こそ、嫌じゃなかった?」
八幡「あ、俺? いや全然別にむしろ役得というか」
雪乃「え?」
結衣「え?」
八幡「すまん今のなしで」
混乱している時に質問されてしまったせいか、変な言葉が口から漏れてしまったような気がするが気のせいだろう。
よし、夜も遅いし疲れたしさっさと寝るか。ベッドが俺を待ってるぜ!
八幡「じゃ、俺は寝るわ。おやす──」
二人「「待って」」
八幡「ぐえっ」
席を立って部屋に戻ろうとした瞬間、二人に両肩をがしっと掴まれてしまった。HA☆NA☆SE!
八幡「……んだよ」
結衣「ちょっと、役得ってどういう意味」
八幡「言いまちがえただけだ、じゃあな」
結衣「え、ちょ、ヒッキー! 待って!」
言いまちがえたと説明したのにも関わらず二人の手は剥がれない。なんで力づくでも剥がせないのだろうと思ったが、多分雪ノ下に筋力のステータスで負けているからだと気付いた。こういう時、後衛職はつらい。
雪乃「あなたは……その……口を合わ……薬を使った時、何か思ったことはないの……?」
八幡「後で土下座して謝ろうとか思ってたよ」
雪乃「何故土下座しようという発想になるのかしら……」
はぁ、と額を押さえながらため息をつく雪ノ下だったが、別に嘘は言ってない。だって実際さっき土下座しようとしてたし。まぁ他に思ったことがないといえば嘘になるが。まぁなに、さっきのは言い間違えただけだけど。
結衣「……本当に嫌だったら……その、謝らなくちゃいけない……んだけど……」
俺の肩を掴みながら(どうも俺は由比ヶ浜にすら筋力のステータスで負けているらしい。何故だ)そうおずおずと呟く由比ヶ浜を見ると、どうにも肩身が狭い。とりあえずそれだけは否定しておくことにした。
八幡「いや別に嫌……とかでは、なかった」
結衣「……じゃあさ、なんか他に感想とかないの」
何、感想って。
八幡「……勘弁してくれ」
結衣「むぅ……」
降参とばかりに両手を挙げながらそう返したのだが、それでは不満なのか、二人とも俺の肩を掴んだまま離してくれない。
はぁ、とため息をついてから、とりあえずこの場をなんとかするための言葉を振り絞って考えた。
八幡「……まぁなんだ、現実世界に帰ってからでいいか」
雪乃「現実世界に帰ってから……?」
秘儀、先延ばしの術でござる。まぁなに、現実世界に戻った時にこのゲームの世界での記憶があるかとか、そもそもどうやって帰るのかとか色々分からないことは多々あるが、ここで白状するよりマシだろう。
八幡「それで許してくれ」
結衣「……ちゃんと説明してもらうんだからね」
ようやく納得してくれたのか、二人の手が肩から離れる。地味に肩に痛みが残っていた。あいつら、どんだけ力入れてたんだよ……。そういやこの世界、魔法は味方に当たり判定はないけど、物理攻撃はありましたね……。
八幡「じゃあ、俺は部屋に戻るから」
雪乃「……おやすみなさい」
結衣「あ、うん、おやすみ」
逃げるように俺は小走りでその場を後にした。これでもし現実世界に戻れた時に記憶が残っていたら最悪だが、まぁその時はその時だ。明日の苦労は明日の俺がする。今の俺が知ったことではない。
しかし今の苦労も、昨日、そしてその前までの俺が投げた苦労なのだろう。
いつまでも引き延ばしにはできない。
いつかはどうにかしなければならないのだろうと思いつつ、俺は部屋に戻ると、ベッドに勢いよくダイビングした。
× × ×
サーガーシーニーイークーンーダー
ソコヘー!!
八幡「……」ムクリ
ということで、この世界に来てから6日目の朝である。
いつも通り朝7時ジャストに目を覚ますと、俺はベッドから起き上がった。
視界、良好。調子、良好。精神、最悪。
ゲームの世界なので身体の調子自体は常に万全なのだが、精神はそうもいかない。目を覚まして数秒だというのに、昨日のやり取りが鮮明に思い出された。
しかし、話は現実世界に戻ってからだと約束出来た。ならば、とりあえず今は気にしても仕方があるまい。
それに、今は他にも気にすることがある。
1の国の王様の話によると、この世界は5の国まであり、その5の国は魔王にすでに支配されているらしい。
となれば、この4の国を出れば、次は魔王戦になる恐れもある。
つまり、あの陽乃さんとの再戦になる可能性もある──というわけだ。
八幡「……」
4の国と5の国の間がどれほど離れているのかは分からないが、もしも5の国に今日中に辿り着くことがあるのであれば……今日中に魔王戦になる可能性もある。でなくても、明日には戦うことになるであろう。
前に陽乃さんにフルボッコにされてから、まだわずか数日しか経っていない。
本当に、今の俺たちで敵う相手なのだろうか。
八幡「……それでも、やらなくちゃならないんだろうな」
なんにせよ、陽乃さんに勝てなければこの世界を脱出する手がかりを知る術は今のところない。
やるしかないのだろう。
ひとまず他のメンバーと合流するために、俺は部屋を出た。
俺ガイルを知ってからまだ二ヶ月も経ってない(当時)のに、思いつきで書き始めた処女作がまさか2スレ目まで行くとは思ってなかったでござる。
もうちょっとだけ続くんじゃ。
それでは書き溜めしてから、また来ます。
× × ×
屋敷の広場に向かうと、すでにそこには他のメンバーが勢揃いしていた。
そのうちの一人、戸塚は俺がやってきたことに気が付くと、ぱっと手を挙げてくる。
戸塚「あ、八幡。おはよう」
八幡「おう、おはよう、戸塚」
きらきらと光る瞳、ぱぁっと輝く笑み、そして俺の耳を癒す可愛らしい声。
うーん、戸塚が毎朝おはようと言ってもらえるのであれば、それだけで朝起きるのが楽しみになってしまいそうだ。
……戸塚に毎朝起こされる、か。そういう考え方もあるのか……。しかし戸塚に毎朝おはようと言われるという事は、つまりはそういう繋がりというわけで……。
小町「どしたの、お兄ちゃん。なんか目が腐ってるよ」
八幡「……ほっとけ、平常運転だ」
小町の声に、はっと我に返ると、小町やその隣にいた雪ノ下、由比ヶ浜たちがジト目で俺のことを見つめていることに気が付いた。
しまった……、戸塚との幸せ新婚生活を妄想していたら、ついトリップしてしまったぜ……。ていうか新婚って言っちゃったよ。何考えてたかバレちゃいましたよ。
雪乃「……あなたが何を考えようが自由だとは思うけれど、さすがに人前では自重した方がいいと思うわ」
そう忠告してくれた雪ノ下の表情は、ガチで心配をしていそうなものであった。……そんな真面目に心配されるほどだったというのか。一体、俺はどんな表情をしていたというのか。
結衣「あはは……、まぁ、さいちゃんだしねー」
由比ヶ浜はなんかもう言っても仕方ないというか、諦め切ってるというか、なんかそんな感じ。……下手に心配されるより、ある意味で本当にどうしようもない扱いされてるような気がする。
八幡「ま、まぁそれは置いといてだな……留美たちはどうしたんだ?」
自分に矛先が向いた空気を変えるように、そう切り出した。この広場には勇者パーティの7人は揃っていたが、留美と川崎はいない。ついでに材木座もいなかった。材木座に関してはどうでもいいが。
すると、俺のその言葉には平塚先生が対応してくれた。
平塚「ああ、あの二人なら朝食の準備をしてくれるとのことでな。ゲームの中だから、すぐに出来上がると言っていたのだが」
平塚先生がそう言ったのと同時に、廊下の方からガタガタと何か音がしてきた。
何事かと振り返ってみると、扉がギィッと開けられ、そして台車……サービスワゴンとかいう名前だったか? それに食事が乗せられて運ばれてきた。
材木座「ほふん、待たせたな皆の衆! 食事の時間である!」
何故かドヤ顔でそう誇るように声を張る材木座。いや、多分だけどお前が作ったわけじゃないだろ……と口に出しかけたが、わざわざ運んできてくれたのは事実なので、水を差すのはやめておくことにした。
八幡「ああ、持ってきてくれたのか。手伝うわ」
材木座が運んできた台車の近くに寄り、乗せられていた皿やらなんやらを机に運ぶことにする。くっ、すでにいい匂いが広場中に広がってきやがった……。
この世界はゲームなので別にメシを食わなくてもなんとかなるのだが、何故か匂いは実装されているし、食べ物の匂いを嗅げば食欲がそそられる。誰だよこの機能実装した奴。いや、おかげで美味しくメシが食えるから別にいいんだけどさ。
さすがに10人分ともなるとそれなりの量があり、台車から机に運ぶだけでも結構な重労働だったが、みんなでそれらを並べ終えた辺りで、丁度川崎と留美の二人も戻ってきた。
たまたま扉の最寄りにいた俺は、その二人と目が合う。
留美「おはよ、八幡」
川崎「あ……、お、おはよう……」
八幡「おお、おはよう」
半ば条件反射でそう挨拶を返したが、口に出してから何か違和感のようなものを覚えた。
別に俺も留美たちにも特別変わった様子はない。ただおはようと返事をしただけだ。ならば、今の違和感はなんだったのだろう。
少し遅れてから、その違和感の正体に気が付く。
そうか、留美や川崎におはようと挨拶をすること自体がレアケース過ぎて、なんだかいつもと違う感じだったのか。
ふと、昨日のダンジョンでの、留美との会話が脳裏を横切った。
──……沙希お姉ちゃんがお母さんで、八幡がお父さんだったら、良かったかもね。
八幡「……」
川崎「……」
留美「……八幡? 沙希お姉ちゃん? どうしたの?」
八幡「あ、いや別になんでも」
川崎「え、あっ、いや、なんでもない」
いや本当になんでもない別に何か変なことを考えていたりとかそういうことは全くないんだからねっ!
ごほんごほんと、誤魔化すように咳払いをし、食事を並べ終えた机の方に視線をやりながら話題を切り替えた。
八幡「ああ、そういや、あれ川崎たちが準備してくれたんだって? なんか悪いな、10人分とか大変だったろ」
川崎「別に……。この世界での料理ってすぐに出来ちゃうから、あんまり大したことじゃないよ」
そういや平塚先生もそんなこと言ってたな。
俺たち勇者パーティはこの世界で使えるスキルなどがほぼ戦闘に特化しているのと、ずっとダンジョン攻略に時間を割いていたこともあって、料理だとかそういうものに気を使ったことがない。
だから、この世界での料理が簡単に出来るというのを知ったのも今だ。今まで毎回用意してもらってたからな。
もしかしたら、この世界には料理だけでなく、そういう戦闘に関係ない分野のスキルも多数実装されているのかもしれない。いや、本当に誰なんだよそこまで考えた奴。全然そういうサブスキル使う暇ないんだけど。
平塚「全員揃ったようだな。なら、早速いただくとしようか」
全員「「「いただきます」」」
一斉に口を揃えていただきますと唱和すると、俺も自分の皿にメシを取り分ける。やたら和食風なものが多いように感じるが、これは川崎の趣味なのか、単にゲームシステムの問題なのか。
八幡「……うめぇ」
久しぶりに使うような気がする箸で口にそれを運ぶと、思わずそんな言葉が漏れてしまった。
未だにこの世界がどういう構造なのかは不明だ。夢なのか、ゲームなのか、異世界なのか、それともよく分からないテクノロジーなのか。
ただ一つ分かっているのは、少なくとも元々いた現実世界とは異なるということだけである。
しかし、その正体がなんであれ、味覚がきちんと存在していることに、感謝の意を覚えざるを得なかった。
小町「ん~~、おいしい~~!」
結衣「わ、すっごいおいしい……これ、全部沙希が作ったの?」
同じく食している他の面子からも、賛美の声が挙がる。
いや、本当に美味いな……。これならいくらでも食えそうだ。まぁ、この世界だとどれだけ美味くても食える量は一定なのだが。今だけはその制限が恨めしい。
誉められて照れたのか、川崎はぷいっと顔を背けた。
川崎「あ、ありがとう……でも、本当に別に大したことはしてないから」
留美「沙希お姉ちゃん、こうやって美味しく作れるようになるために、いっぱい努力してたもんね」
川崎「る、るーちゃん! 余計なこと言わなくていいからっ」
料理などのスキルも、経験値みたいなのを貯めてレベル上げする必要があるのだろうか。
しばらく川崎の料理に舌鼓を打っていると、ピコーンとウィンドウが開き、そしてそれにテキストが綴られた。
ハチマンのHPが 20じょうじょうした!▼
ハチマンのMPが 26じょうしょうした!▼
これはいつもの食事をした時のステータスアップだ。
しかし、今までに食べた食事とは比べ物にならないくらい、ステータスの上昇値が高かった。これも川崎の料理スキルが高いからなのだろうか。
詳しいことは調べてないからよく分からないが、作り手によって左右された可能性は高いだろう。
戸塚「すごいステータス上がったね……」
いろは「わ、今までの倍くらい上がってますよ」
他の面子も同様だったようで、ウィンドウを確認しては驚きの声が聞こえてきた。すげぇな川崎の料理。これずっと食い続けてたらステータスカンストすんじゃねぇの。
いっそこの国に留まって陽乃さんに勝てる算段がつくまで、レベル上げと川崎のメシでドーピングしまくるか……? なんて考えていると、視界の端で何かがピカッと光り輝くのが見えた。
その光の方を向くと、雪ノ下の身体が光り輝いている。これはもしかして……。
雪乃「これは……?」
八幡「スキルが発動したのか?」
今までにも、こうやって食事の際にスキルが発動したことがある。
一度目は俺が発動した『こんじょう』。体力が尽きそうなダメージを貰っても、一度だけHPが1残るというものだった。
あれのおかげで、俺は魔王陽乃さんと戦った際に瀕死状態にならずに済んだのだ。
二度目は由比ヶ浜が発動した『バーサーカー』。今でも詳細はよく分からないが、多分正気を失う代わりに大幅なステータス向上とかそういったものだろう。
その後、正気を失った由比ヶ浜との戦闘があったとはいえ、そのスキルがあったからこそ、一度は全滅を覚悟したモンスターハウス戦を乗り切ることに成功した。
三度目は平塚先生が発動した『スーパーアーマー』。これは相手からダメージを貰っても怯むことなく、そのまま行動を続けることが出来るというものであった。
あのシャドウとかいうボスが繰り出してきた影の三浦たちと戦った際、このスキルによって吹き飛ばされなかった平塚先生のおかげで、戦線の崩壊を免れたりしたものだ。
由比ヶ浜の暴走という一例はあれども、基本的に食事の時に発動したスキルには毎度助けられている。
今回、雪ノ下に発動したスキルは、一体どのようなものなのだろうか……。
雪ノ下のウィンドウに現われたテキストを、その場にいた全員が見た。
ユキノは スキル『しゅじんこうほせい』が はつどうした!▼
雪乃「しゅじんこう……ほせい?」
説明しよう。
主人公補正とは、主人公故にあらゆるご都合主義的な恩恵を受けることである。
で、それがスキルになると……どうなるんだろう。雪ノ下に都合がいい事態が発生するとか、そういうのなのかなぁ。お願いだから死んだ仲間の分だけレベルが上がるとかそういう主人公補正じゃないと嬉しい。
まぁ、今までも毎度お世話になったスキルだ。おそらく、今回もお世話になることだろう。
平塚「主人公補正か……。ふっ、かつてはそんなものも信じていたな……。自分に都合の良い事が起こると、それは自分が主人公だから起こるものなのだって……。しかし、いつかは気が付いてしまうんだ。この世界の主人公は、別に自分ではないのだと……」
八幡「うわぁ、すごい心当たりのある考え方だ……」
世界の主人公は自分ではない。今となっては当たり前のように分かっていることだが、幼い頃は自分こそが主人公であると信じて疑わなかった。
けれども、いつかどこかで挫折し、失敗し、異世界に呼ばれることも突然美少女に告白されることも勇者の剣を拾うこともなく、自分はただの一般人だと気が付く時がやってくるのだ。
自分は無力で、何の特殊な能力もない。
でも、この世界では違う。
自分たちは、魔王を倒す勇者のパーティなのだ。
せめて、この世界にいる間だけでも。
自分たちは選ばれた勇者たちであると、思い込んでもバチは当たらないだろうか。
× × ×
朝食を終えた後、俺たちは屋敷を出て4の国の街に繰り出していた。
この国を出れば、魔王・陽乃さんがいる5の国に向かうことになる。当然、激戦は免れないだろう。
その時のために、装備やアイテムなどの準備を万端にしなければならない。
ということで、川崎、留美の二人に案内されながら、店に向かって歩いているというわけである。あ、なんでか知らないけど一応材木座も付いてきてた。お前門番してろよ。
材木座「ふん、どうだ。我が自慢の風の国は」
八幡「別にお前の国じゃねぇだろうが……」
戸塚「でも、本当に過ごしやすい国だよね。風が気持ちいいなぁ」
そう言って髪をかき上げた戸塚が妙に色っぽく見えてしまい、思わずばっと目を逸らしてしまった。
危ない……。今のはマジで危なかった……。MK5(マジで恋に落ちる5秒前)だった……。
この国に初めて訪れた時にも感じたことだが、この4の国……通称風の国は、寒すぎない程度に涼しく、吹く風も爽やかで、とても落ち着いた雰囲気のある国だ。
改めてのんびりとこうやって町並みを眺めてみると、まるで町全体が芸術品のようにすら感じる。
ついつい見惚れていると、ぴょこぴょこと揺れる青みがかった黒髪のポニーテールが視界の端に入ってきた。
振り向ければ、そこにいるのは川崎であった。その傍らには、当然のように留美もいる。
川崎「……どうしたの?」
八幡「いや、すげぇ綺麗だなって」
国が。
めぐり先輩の水の国も、三浦の炎の国も素晴らしく整った国だったが、あれらとは全く別ベクトルとはいえ、ここも完成された町並みのように思える。
日本自体、京都とかそういった一部の例を除いて、町並みとかそういうのに気を使ってる国じゃないこともあって、あまり詳しくはないが、そんな素人目から見ても、素晴らしい出来だと褒めちぎりたいほどだ。
あと個人的には、こののんびりとした雰囲気が他の国に比べて好みであるというのもある。
川崎「き、綺麗って……!? その、いきなりそんなこと言われても……」
留美「……沙希お姉ちゃん、八幡は多分、この町のことを言ってるんだと思うよ」
川崎「えっ……あっ」
しかしこの世界が本当にゲームだとしたら、この国をデザインした奴はセンスあるなぁ。
逆に、この世界が夢である可能性はグッと下がったかもしれん。無意識にでも、俺がこんな自然豊かな世界を創造出来るわけないしな。
八幡「こんな町になら住んでもいいかもしれん、もっとも千葉ほどじゃないが……。……どうしたんだ、川崎?」
川崎「……別に」
留美「……八幡、もうちょっと言葉には気を付けた方がいいと思う」
八幡「えっ」
なんで今怒られたんだろう……。俺、何か怒らせるようなこと言ったかな……?
多分、言ったんだろうなぁ……。今までも無意識的に相手を怒らせるような言葉や仕草を取って友達を失くし続けた俺のことだし。
あれか、千葉とこの国を比べたのがいけなかったのか。そういや、留美はこの国の女王だし、川崎はその留美のことをなんか溺愛してる節があるしな。
別に馬鹿にするような意図があったわけではないが、千葉と比べてとはいえ下に見るような発言はちょっと迂闊だったかもしれない。
八幡「あ、ああ……悪い」
川崎「……気にしてないから平気。それよりほら、あそこが、この町で利用出来る店だよ」
川崎が指さした方を見てみると、その先にはわいわいと賑わっている商店街が並んでいた。
……が、1の国の時から変わらず勇者パーティが利用できる店は限られているようだ。
せっかくこれだけ良さげな店が並んでいるのに少々もったいないような気はするが、あちこち見て回って悩んで時間を無駄にしなくて済むだけいいのかもしれない。
川崎のことが少々気になったが、気にしていないと言われてしまった以上は何か言ってもおそらく逆効果になりそうだったので、雪ノ下たちについていきながら店に向かうことにした。
商人「いらっしゃいませ!」
ニア 買いに来た
売りに来た
雪乃「買いに来たのですけれど」
いつも通りの返事をしながら、雪ノ下たちは店の品揃えを確認し始める。
これから俺たちが挑むのはラストダンジョンだ。前回のダンジョン攻略時にでも貯まっていたのか、残金にもかなりの余裕がある。
回復系などの消費アイテムは買えるだけ買い、装備なども出来る限り上位のものを買い揃えても良いだろう。
平塚「さすがにラスダン前の国の店ともなると、品揃えも豊富だな」
八幡「そうっすね」
平塚先生の言った通り、この店で買えるアイテムの種類は今までの中で最多であった。
最初期の店では薬草しか買えなかったのが、もはや懐かしい。
小町「HPとMPの回復アイテムはたくさん買っちゃいましょうか」
結衣「待って。装備も新しくするんなら、そっちの金額も見てからじゃないと」
小町「お、おお……結衣さん、もしかして結構家計簿とか付けられるタイプだったり……?」
雪乃「私たちの装備を全て一番良い物にすると……大丈夫ね、それでも十分回復アイテムを買える余裕はありそう」
いろは「うっわ、気が付いてなかったですけど、わたし達結構お金持ってますねー……これ、他に使い道あったりしないんですか?」
結衣「うーん、どうなんだろうねー」
お金のやりくりはどうやら雪ノ下や由比ヶ浜がやってくれているようなので、そちらに全て任せることにした。
しかし装備か……。ん、これはもしかして、さすがにこれだけの品揃えがあれば俺もこの総武高校の制服以外の装備があったりするんじゃないだろうか?
雪乃「比企谷くんの装備できるもので一番防御力が高そうなのは……これね」
ハチマンは そうぶこうこうのだんしせいふく+4 をてにいれた!▼
八幡「何故だぁぁぁああああああああ!!」
戸塚「あ、あはは……」
まさかラストダンジョン突入直前になっても、元の世界の高校の制服のままだとは思わなかった。
いやね、ステータスを確認するとですね、きちんと防御力とかは上がってるんですよ。初期の制服に比べると雲泥の差なんですよ。
でもね、見た目に変更が一切無いんですよ。
このようなRPG世界において、なんで俺だけこんな場違いの装備のままなんだ……。
材木座「ハーッハッハッハ! 惨めだな、八幡よ」
現実世界と似たような暑苦しいコートを着ていて、そして現実世界でもこの世界でも場違いな格好をしているこいつだけには何も言われたくはなかった。
結衣「ゆきのんの鎧、前よりもっとカッコよくなってるね!」
雪乃「ありがとう。由比ヶ浜さんのその僧侶服もすごく可愛らしくて、似合っていると思うわ」
一方、他の雪ノ下や由比ヶ浜は相変わらずそれぞれの職業に相応しい、勇者や僧侶らしい装備だ。
上位の装備なのか、この世界の序盤の頃の装備に比べるとステータスだけでなく見た目もそれなりに豪華なものになっている。
一方で、俺だけはずっと総武高校の制服のままだ。
……この世界のシステムは、そこまで俺のことをいじめたいのだろうか。
べ、別に見た目はステータスに関係ないんだからね! モンハンでもいつも一式揃えるよりスキル優先で装備決めたりしてたしね! スキル優先で装備決めると、大抵見た目がごちゃごちゃするしね!
結衣「ん、これで全部だね」
商人「まいどありー!」
そんな装備の不遇っぷりを嘆いていると、いつの間にか由比ヶ浜たちが買い物を終えていた。
よく見ると、ステータスのところの残金ががっつり減っている。まぁ、他に使い道はないだろうし、ここで使い切ってしまっても別に構わないだろう。
平塚「装備も整えた。アイテムも補充した。となれば、この国を出て最後の国へ向かうとしようか」
平塚先生がそう言うと、パーティメンバーの間にぴりっと緊張感が走った。
昨日も激戦を繰り広げたばかりであるが、まだそれで終わりではないのだ。勇者魔王物は、魔王を倒すまで終わることはない。
この世界の魔王……雪ノ下陽乃を倒すまで、元の世界に帰ることは出来ないのだ。
まぁ、もっとも本当に魔王を倒したからといって帰ることが出来る保障があるというわけでもないんだが……。そこはゲーム的ご都合主義でなんとかなるといいなぁ。
留美「みんな……」
川崎「悪いけど、あたし達はついていけない。本当は、力になりたいんだけど……」
八幡「あー、まぁしゃーねぇよ。そういうものらしいし」
葉山の時もそうだったが、やはり国の役目がある人は俺たちと国を出ることは出来ないらしい。
前回のダンジョンで留美や川崎、材木座が共に行動することが出来たのはあくまでストーリー上の都合の例外でしかないということか。
材木座「我がついていれば魔王も楽勝であっただろうに……。くっ、すまぬな、八幡」
八幡「ははは、気にするな、材木座。いなくても大差ない」
口ではそう言っておくが、パーティメンバー全員が戦闘に参加出来るこのゲーム世界だと、パーティの人数は多ければ多いほど有利だ。戦争も頭数こそがモノをいう。材木座であろうとも、いてくれた方が戦力にはなるのだが。
しかし川崎たちをパーティに加えられないのはシステムで決まってしまっている以上は仕方がない。それに、前回のダンジョンと、宿と飯の提供、今日の買い物の案内をしてくれただけでも十分以上にありがたい。
留美「……一緒には行けないけど。でも……なんか、また会えるような気がする」
八幡「え?」
その言葉の意が掴み取れず、思わず聞き返したが、留美はそれに答えずに顔を背けてしまった。
何かのフラグ会話なのだろうか? だとしたら、もしかしたら今後また留美たちと会えることがあるのかもしれないな。
川崎「そろそろ行こっか。この国の門はあっちにあるよ」
川崎の案内を受けて、俺たちは商店街を後にした。この美しい町並みも見納めかと思うと少し惜しい。
そのまま道中では特にイベントも起こらず、俺たちは4の国の門へと辿り着いた。
川崎「ここを出て、そのまま道なりに向かえば、5の国に行けるはず」
雪乃「ありがとう、川崎さん。助かったわ」
結衣「ありがとうね、沙希!」
留美「でも、もう5の国は魔王に支配されてる。危ないかもしれないから、気をつけて」
そういや、1の国のクソ王様もそんなことを言っていたような気がするな。
もうすでに1の国を出た時のことなど遠い昔の話のように思えるが、あの国を出てからまだ一週間くらいしか経ってないんだよな……。
八幡「まぁ、お前も国の女王とか大変そうだけど、まぁ達者でな」
留美「……お前じゃない」
八幡「……悪かったよ、留美」
留美「……ん」
名前で呼ぶとなんとか機嫌を直してくれた。こいつも割と頑固な奴だ。
材木座「八幡よ……。すぐに気付くことになるだろう。我がいなくなったことによって、我がどれだけ偉大だったかを!!」
八幡「んじゃ、そろそろ行くか。あんまりだらだらしてても仕方がないしな」
雪乃「ええ、そうね。川崎さん、鶴見さん、本当にありがとう」
川崎「……魔王討伐、頑張ってね」
留美「応援してる」
材木座「おおい! 八幡! 無視するな!」
戸塚「あはは……材木座くんも、元気でね」
なんやかんやあった4の国編もこれで終わり。
留美、川崎、……あと一応材木座にも別れを告げると、俺たちは門を開いて4の国を出た。
いろは「はー、これからラスボスっぽいとこ行くんですよねー? なんかちょっと緊張してきました」
平塚「そうか? むしろラスボス戦は燃えるものだろう。ああ、世界の半分をくれてやるとか言われたらバッサリと断ってやりたい……!!」
八幡「いや、ラスボス陽乃さんですから……。でもあの人なら世界の半分くれてやるくらいならガチで言いかねないな……」
魔王・陽乃さんに勝てるという保障はない。
けれども、やるしかないのだ。
俺たちがロールプレイしている勇者パーティというのは、そういう役割なのだから。
就活が終わると卒研が忙しくなるんですね。ちぃ覚えた。
もうしばらく全スレの更新速度が遅くなりそうですが、エタることだけはないので、長い目で見ていただけるとありがたいです。
それでは書き溜めしてから、また来ます。
お待たせして申し訳ありません
三作品とも一応書いてはいるので、もうしばらくお待ちください
この人何したの?
八幡「俺ガイルRPG?」2スレ目 (152レス)
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抽出解除 必死チェッカー(簡易版) 自ID レス栞 あぼーん
137(3): [sage] 2015/12/09(水) 01:19:15.43 ID:l35PsVYCO携(1/2) AAS
この人何したの?
139(1): [sage] 2015/12/09(水) 01:38:49.08 ID:l35PsVYCO携(2/2) AAS
>>137
他のSS荒らしてまわってる
異常に伸びてるスレ見てみ
八幡「夢を見た…その世界でも俺は微妙な感じで」
八幡「いやいや夢の中なんだなら好きにさせろって思うが、そりゃ好き勝手できないのが夢。好き勝手できるなら一生寝てる自信がある」
そう夢だったのだ
全ては夢だったのだ
明日もこれからも…あいつらといれば夢の中みたいに
それなりに楽しいことだろう
俺はそんな事を考えながら
また寝た
次は少しエッチな夢だといいなと思いながら
俺ガイルRPG 完
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